1.電気分解で生じるもの
電気分解が起こったとき、陽極や陰極ではどのような物質が生じるのかを考えましょう。
どのような物質が生じるかは、ある程度規則性があります。
その規則性は、溶けている物質(溶質)から電離して生じるイオンによります。
では陽極と陰極のそれぞれについて見ていきましょう。
陽極の場合
陽極では
陰イオンが電子を得て、原子になる
という反応が起こりますね。
液中に塩化物イオンCl⁻がある場合
塩化物イオンCl⁻が電子を失い、塩素原子Clとなります。
その結果、塩素の気体Cl₂が発生します。
式で書くと 2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻ (「e⁻」は電子のこと)
液中に水酸化物イオンOH⁻がある場合
水酸化物イオンOH⁻が電子を失います。
その結果、酸素の気体O₂が発生します。
式で書くと 4OH⁻ → O₂ + 2H₂O + 2e⁻
液中にCl⁻もOH⁻もない場合
この場合、液中にSO₄²⁻やNO₃⁻などがあることが多いです。
これらはさまざまな原子が集まってイオンになっています。(多原子イオンという)
だから重たい、そのため動きにくい。
よって反応に関与しないと覚えておきましょう。
では陰極は誰から電子をもらうのでしょうか・・・?
答えは水H₂Oです。
電子を持っていそうなのは水しかありません。
水分子H₂Oが電子を失います。
(水は陰イオンではないので、まさに“無理やり”引き起こしている反応です。そのため、そんなに起こりやすい反応ではありません)
その結果、酸素の気体O₂が発生します。
式で書くと 2H₂O → 4H⁺ + O₂ + 2e⁻
陰極の場合
陰極では
陽イオンが電子を失って、原子になる
という反応が起こりますね。
陰極ではイオン化傾向というものが関係してきます。
イオン化傾向とは「どれだけイオンになりやすいか・なりにくいか」を表します。
中学では、次の8つを覚えておくとよいでしょう。(どれも陽イオンになるものばかりです)
▼イオン化傾向
電気分解の話にもどります。
液中に水素Hよりイオン化傾向が大きいイオンがある場合
イオン化傾向が大きい=できるだけイオンのままでいたい
ということです。
つまりイオン化傾向の大きいイオンには何も起こりません。
一方で水素イオンH⁺は
イオン化傾向が小さい=できるだけイオンでいたくない
ということです。
よって陰極から電子を得て、水素原子にもどります。
その結果、水素の気体H₂が発生します。
式で書くと 2H⁺ + 2e⁻ → H₂
液中に水素Hよりイオン化傾向が小さいイオンがある場合
イオン化傾向が小さい=できるだけイオンでいたくない
ということです。
イオンでいたくないので、原子にもどろうとします。
一方で水素イオンH⁺は、それに比べて
イオン化傾向が大きい=できるだけイオンのままでいたい
のです。
よって水素イオンH⁺には何も起こりません。
したがってイオン化傾向の小さなイオンが、陰極から電子を得て原子にもどります。
銀イオンAg⁺ならば、陰極から電子を得て、銀原子Agになります。
式で書くと Ag⁺ + e⁻ → Ag
銅イオンCu²⁺ならば、陰極から電子を得て、銅原子Cuになります。
式で書くと Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu
2.まとめ
ここまでのことをまとめると
陽極では・・・
陰イオンが電子を失って、原子になる。
①液中にCl⁻がある・・・塩素の気体Cl₂が発生
②液中にCl⁻がない・・・酸素の気体O₂が発生
陰極では・・・
陽イオンが電子を得て、原子になる。
①液中にHよりイオン化傾向が大きいイオンがある・・・水素の気体H₂が発生
②液中にHよりイオン化傾向が小さいイオンがある・・・そのイオンが原子となる
(※以上の電気分解は、電極が白金や炭素のとき)
次回は「イオン化傾向」です!
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