1.摩擦力とは
●摩擦力
物体の動こうとする向きと反対向きにはたらく力。
摩擦力は「物体と床」「物体と地面」など、物体どうしの接している面にはたらく力です。
その向きは物体の動こうとする向きと反対向きです。
●摩擦がする仕事
摩擦力は物体の動きを邪魔する力とも言えるでしょう。
摩擦力がはたらくからこそ、摩擦のある面上で動いている物体は最終的には止まってしまいます。
止まる=速さがゼロ=運動エネルギーが0J
ということです。
摩擦力は運動エネルギーを奪うことができる=摩擦が「仕事」をする
と言うこともできます。
2.摩擦力を求める問題
例題
3kgの物体を↓の図のような斜面から静かに滑らせた。
物体は斜面を滑り下りて、A点に達したのち3m離れたB点を通過した。
B点での速さはA点での速さの2分の1であった。
この斜面には摩擦力がはたらかないが、物体には摩擦力がはたらく。
このとき水平面上で物体にはたらいた摩擦力は何Nか。
ただし100gの物体にはたらく重力を1Nとする。
【解答】
摩擦の仕事によってエネルギーを奪われる問題です。
まずスタート地点での位置エネルギーを求めましょう。
位置エネルギー = 重さ(N) × 高さ(m)
で求められるので
位置エネルギー = 30N × 4m = 120J
です。↓
次にスタート地点での運動エネルギーを考えます。
静かに滑らせるとあるので
速さ=0m/s
です。
よって運動エネルギーも
運動エネルギー=0J
となります。↓
次に力学的エネルギーを考えましょう。
力学的エネルギー = 位置エネルギー + 運動エネルギー
ですので、この問題の場合
力学的エネルギー = 120J + 0J = 120J
となります。↓
このとき力学的エネルギーは120Jのまま保存されます。↓
この力学的エネルギーの保存は、斜面の最下点であるA点まで続きます。
よってA点では
位置エネルギー=0J
運動エネルギー=120J
です。↓
しかし水平面を進んでいるときは
摩擦力がはたらくため力学的エネルギーは保存されません。
B点を通過するときに速さが減っているので、すなわち運動エネルギーが失われているということです。
ではB点でのエネルギーを考えましょう。
B点では
位置エネルギー=0J
です。
次にB点での運動エネルギーを考えます。
運動エネルギーは速さの2乗に比例します。
※「速さの2乗に比例」とは
速さが2倍・3倍・4倍・・・になると、
運動エネルギーは4倍・9倍・16倍・・・になるということです。
B点での速さはA点での速さの2分の1倍です。
速さが
ということは・・・
運動エネルギーは
ということです。
よってB点での運動エネルギーは
となります。↓
したがってB点での力学的エネルギーは
力学的エネルギー=30J
です。
つまり摩擦により
120J - 30J = 90J
のエネルギーを奪われた(仕事をされた)ということです。↓
仕事の求め方は
仕事(J) = 力(N) × 力の向きに動いた距離(m)
です。
摩擦力をx(N)とすると
摩擦のした仕事 = x(N) × 3m = 3x(J)
となります。
これが失われた力学的エネルギー90Jに等しいので
3x(J) = 90(J)
よってx= 30(N) となります。
したがって正解は30Nです。
・摩擦力はその物体の進行方向と反対向きにはたらく。
・摩擦力がはたらくとき、力学的エネルギーは保存されない。
・「摩擦がした仕事=失われた力学的エネルギー」となる。